徳島市出身の作家で僧侶の瀬戸内寂聴さん(92)が8日、京都市の寂庵でほぼ1年ぶりに法話を再開した。寂聴さんは以前と変わらぬ元気な様子で登場し、「皆さんにまた会えて良かった」などと語り掛けた。法話の後に行われた記者会見では「命がある限り小説を書きたい」と文筆活動の本格的な再開へ意欲を見せた。

 冷え込みが厳しく、朝方は小雨が時折ぱらつくあいにくの天候だったが、寂庵の開門前から、熱心なファンが続々と詰め掛け、聴衆は300人を超えた。盛大な拍手に迎えられた寂聴さんは、少し涙ぐむ様子を見せながら「今まで皆さんが聞きに来てくれること、自分が生きていることが当たり前と思ってきましたが、今日初めて、お会いできるのが不思議なんだと思って、本当にありがたい」と法話を再開できた喜びを述べた。

 また、「長く患ったけれど、がんが分かってすぐに取ってもらえ、やっぱり仏様が守ってくださっているんだなと思っています」などと療養生活を振り返った。

 会見では、「死ぬとは思わなかったが、寝たきりになるのではと恐れる気持ちはあった。治ったのは全国の人が祈ってくれた力だと感じています」と話した。

 さらに、今後の大きな活動の柱として、小説の執筆と同時に「戦争をするなと言わなければならないから、命を与えられたと思います」と、平和を訴え続けることを挙げた。

 寂聴さんは昨年5月末、背骨を圧迫骨折して入院。同9月には胆のうがんの手術を受けるなどした。退院後は同市内の自宅で復帰に向け、療養とリハビリに努めていた。5月以降も、月1回のペースで法話を行う予定。