就職から定年退職まで40年前後。人生80年と考えると、その半分は働くことになる。「仕事は人生の礎。健康で心豊かな労働環境の整備が欠かせない」。労働行政を志すようになってから、一貫して胸に秘めている強い思いだ。
4月から徳島の労働行政のかじ取りを担う。県内の2月の有効求人倍率は1・07倍と20カ月連続で1倍台を維持しているが、安心はしていない。大切なことは雇用のマッチングとし、特に大学生や高校生ら若年者の就職支援を重点施策の一つに挙げる。「彼らにとって就職は人生を見据える大きな分岐点だから」
共働き世帯が増える中、時間外労働の削減や有給休暇の取得といった働きやすい職場づくりが重要になるとみる。ワークライフバランス(仕事と生活の両立)の推進や女性労働者の支援などに力を注ぐ方針だ。
就任後は千葉県の自宅に妻と娘2人を残しての単身赴任だが、3月までは家事の一翼を担っていた。働く妻に任せ切りにせず、休日も積極的に動いた。「共働き世帯では、相手への思いやりと家事のシェアを自然体でこなすことが大切」と笑う。
労働者の支えになる仕事に就きたいと、1980年に旧労働省に入った。20年以上本省で勤務し、労働基準や雇用機会均等、安全管理、育児・介護休業推進といった各分野の法案整備や施策に携わった。労働者を取り巻く環境が時代とともに変わる中、労働行政の責務を実感している。「適法かつ適正に、着実に仕事をする」。丁寧な口調に実直な人柄がにじむ。
徳島に赴任したのは初めて。徳島市で先日開かれた「はな・はる・フェスタ」を訪れ、阿波踊りの熱気とパワーを肌で感じた。8月の本番は家族と一緒に楽しむ計画だ。山梨県出身。58歳。