取締役になってわずか2年。常務から異例の抜てきでトップに登り詰めた。「信じられなかったのが正直な心境だった。大きな会社を引っ張る器ではないと思ったが、恩返しのために頑張ろうという気持ちになった」。2月上旬、常盤百樹会長から打診され、戸惑いながら身の引き締まる思いで受けた。
原子力規制委員会の審査が大詰めを迎えている伊方原発(愛媛県伊方町)の再稼働を最重要課題に掲げる。愛媛県出身の新リーダーは「地元の同意が得られるよう安全性を丁寧に説明していく」と強調し、年内の再稼働を目指す。
電気事業は原発問題や電力自由化で転換期にある。取り巻く環境が複雑になっており、「社員の意見を拾い上げて最終判断をする。輪の中に入りスクラムを組んで進んでいくスタイルでやりたい」と合議型経営で臨む考えだ。そんな思いの源流にあるのが、2001年から2年間務めた徳島支店総務部長時代。変電所建設の用地取得を進める中、困難な買収交渉をやり遂げた部下を見て「使命感と責任感を肌で感じた。会社は社員の地道な努力に支えられていることがよく分かった」と振り返る。
日曜日には禅寺に通う。徳島支店時代に観潮院(徳島市)で座禅と出合ったのがきっかけで「いいリフレッシュ。気持ちを切り替えて仕事に集中できる」。1男1女は独立し、松山東高校の同級生だった妻と高松市で2人暮らし。今春、選抜高校野球大会に出場した母校の活躍に夫婦で胸を躍らせた。「夏も出場したらぜひ甲子園で応援したい」。60歳。