「衣服は時代の特色や流行を色濃く映すもので、いわば時代を映す鏡。近世以降の洋服を中心に集めて研究し、展覧会や出版を通じて成果を広く伝えています」。所属する京都服飾文化研究財団の業務を紹介する。
 
 財団は女性下着メーカー・ワコール(京都市)が母体となり、1978年に発足。16世紀以降のドレスなど服飾資料約1万2千点、文献資料は約1万6千点所蔵する。それらをひもときながら、服飾の未来を探っている。
 
 学芸員に就いたのは90年。「大学を出たら普通に企業へ就職するつもりだった」が、財団の募集に心が動いた。資格を持っていた上、ファッションやアートに興味があり、自然な成り行きだった。
 
 日々の研究だけでなく、展覧会活動にも力を入れる。とりわけ印象に残っているのが94年の「モードのジャポニスム」展だ。日本の着物が19世紀以降の西欧の服装にどう取り入れられたかを探った展覧会で国内外で好評を博した。
 
 「当時は助手だったが、海外とのやりとりや運営などさまざまな経験を積むことができた。財団の評価が高まるきっかけにもなった」と振り返る。
 
 近年は価値観の多様化により、有名ブランドによるプレタポルテ(高級既製服)を追えばよいという状況ではなくなった。財団内では精神的な支柱であった先輩の学芸員が今年、第一線を離れた。
 
 こうした中だが、「服飾関係で働く人たちに誇りを持ってもらえるよう、これからも力を尽くしたい」。
 
 少なくとも年2回は帰省し英気を養う。「新鮮な野菜や魚を口にするだけで、徳島の生活の豊かさを痛感する」。今、注目しているのは培われてきた藍染の文化で、研究を進めて「今後の活動につなげていきたい」と話した。
 
 にい・りえ 徳島市出身。城東高、関西学院大文学部美学科卒。西洋美術史を専攻し、大学在学中に学芸員の資格を取得した。京都服飾文化研究財団では広報業務も受け持つ。大阪市在住。48歳。