徳島大大学院医歯薬学研究部は8月1日、有人宇宙探査に必要な宇宙食の研究開発拠点になる「宇宙食品産業・栄養学研究センター」を開設した。宇宙航空研究開発機構(JAXA)が2030年の実現を目指している有人月面探査を見据え、宇宙での筋萎縮などを防ぐ機能性食品の研究や、宇宙で食料を自給できる工場開発などに取り組む。
センターは、大学内外の栄養学や農業、半導体の専門家、JAXA研究員ら20人余りで構成。他大学や食品会社と連携し、筋萎縮や骨粗しょう症、味覚障害といった宇宙環境に起因する疾患を防ぐ食品をつくる。
また宇宙での食料自給に向け、最小限の水や二酸化炭素で野菜が栽培できる植物工場を開発する。タンパク質が豊富な大豆、糖質が多く含まれるサツマイモの水耕栽培を想定している。
センター長の二川健教授(生体栄養学)はこれまでにJAXAなどと共同で3回の宇宙実験を実施。無重力で筋肉が萎縮するメカニズムを解明し、大豆のタンパク質やイソフラボンに改善する働きがあることを突き止めている。センター設立によって、さらに研究成果を発展させる。
筋萎縮を防ぐ機能性食品は宇宙飛行士の健康維持だけでなく、高齢者の寝たきり防止や災害時の非常食として役立つ。宇宙での植物栽培は、砂漠が広がる中東地域などでの応用も視野に入れている。
蔵本キャンパスの栄養学棟に一室を設けた。メンバーは常駐せず、各自が情報共有しながら研究を深め、センターとして成果を発表する。
二川教授は「世界をリードする研究を行うとともに、人材育成に力を入れたい」と話している。