徳島県小児科医会 日浦恭一(徳島新聞朝刊 満1歳にて掲載)
インフルエンザはその症状が強く体力や抵抗力のない子どもや老人にとって厳しい病気です。さらに子どものインフルエンザには合併症が多く、治療薬にも問題があります。
インフルエンザの臨床症状は成人では突然始まる高熱、咽頭痛、頭痛、関節痛、四肢痛、倦怠感などで、全身症状が強いことが特徴です。自然経過では2~3日で解熱して、その頃から鼻汁や咳などの呼吸器症状が目立ってきます。嘔吐や下痢などの胃腸症状は少なく、完全に回復するには1~2週間かかります。
小児でも学童や年長児では成人と同じような症状を示しますが、低年齢の乳幼児では全身症状よりも呼吸器症状を示すことが多くなり、RSウィルス感染症や普通感冒と区別することが必要です。また高熱は熱性けいれんの原因になりやすく、気管支炎や脱水症の合併も乳幼児がインフルエンザで入院する原因になります。
さらにインフルエンザでは高熱の持続、けいれん重積やけいれんの反復、意識障害などを伴う急性脳症の発生が問題になります。小児の急性脳症の原因の中でインフルエンザは最も多いウィルスです。高熱が持続して、熱性けいれんが見られる場合には単なる熱性けいれんか、急性脳症なのかの鑑別を考えて対応することが求められます。
さらにインフルエンザでは高熱にともなう「熱せんもう」と呼ばれる意識障害が見られることがあります。これがインフルエンザ治療薬の副作用と紛らわしく、また急性脳症の症状とも鑑別が必要となります。
インフルエンザに対する検査法や治療法は随分進歩していますが、まだまだ様々な問題が残されています。