徳島県小児科医会 日浦恭一(徳島新聞朝刊 満1歳にて掲載)
昨年秋ごろからウィルス性胃腸炎が流行しています。特に12月にはノロウィルス感染症による胃腸炎が猛威を振るいました。今月は一般に嘔吐下痢症と呼ばれるウィルス性胃腸炎について考えてみました。
乳幼児が急に嘔吐を始める場合にまず考えておかなければならないのが嘔吐下痢症です。多くの場合に原因はウィルス感染によるものですが、その初期には嘔吐以外の明らかな所見がない場合もたくさん見かけられます。
小児のウィルス性胃腸炎を起こす原因にはロタウィルス、ノロウィルス、アデノウィルス、エンテロウィルスが知られています。冬に流行するのはノロウィルスとロタウィルスです。アデノウィルスは一年中見られ、エンテロウィルスは夏かぜに伴う軽症胃腸炎の原因として知られています。
ノロウィルスの流行は秋から冬、インフルエンザが流行する前に多く発生して、インフルエンザが流行し始めると減少します。インフルエンザの流行を挟んで2月頃からロタウィルスが流行し始めます。
冬季にはノロウィルス、インフルエンザ、ロタウィルスの流行を考えながら診療することになります。これらのウィルスはいずれも伝染力が強く、また嘔吐だけでなく高熱を伴うことがあり、小児の脱水症の原因疾患として重要なものばかりです。
軽症のウィルス性胃腸炎でも感染源になります。とくにノロウィルスのように食中毒の原因として頻度の高いものがありますから、その予防には真剣に取り組む必要があります。