全国で活動する民謡再編成プロジェクト「MIKAGE PROJECT」(東京)が、阿波踊りの「阿波よしこの」をアレンジした楽曲「阿波踴(おど)る~渦と成り~」を完成させた。原曲のメロディーは変えずにポップなコードやジャズの要素を盛り込み、斬新でダンスフルな曲に仕上がっている。2023年1月2日に徳島市のアスティとくしまで開かれる「徳島県阿波踊り協会新春公演 宴」の舞台でMIKAGEの3人が披露する。
「阿波踴る―」は冒頭、「阿波へ阿波へと 流れる潮は」というおなじみの歌詞に合わせた三味線と箏(こと)によるしっとりとした演奏から始まる。かけ声の後に「チャンカ、チャンカ」と鳴り物の軽快なリズムが続くと、心地よいスイングへと変化。拍子を変えながら和と洋の異なる表情を見せ、個々の卓越した演奏と歌声が思わず踊りたくなる雰囲気を醸し出している。
新春公演への出演決定を機に、2カ月余りかけて作編曲した。8月にはMIKAGEの3人が徳島市を訪れ、アスティとくしまや演舞場で阿波踊りを見学。浅野祥さんは「人々の輪の中心にある芸能の中でも、大勢を引きつける強い力を持っている」と印象を語る。編曲にあたっては、「踊りの雰囲気や熱気が頭から離れなかった。その流れをくむべきか、自分たちらしい音楽にするか、メンバーと議論を重ねた」と振り返る。本間貴士さんは「連の人たちは、踊りの構成や鳴り物によってそれぞれの物語を作っていると感じた。翻って、僕たちは民謡をアレンジするという原点に返り、自分たちの阿波踊り音楽を作ろうと考えた」。
MIKAGEの理念は、作編曲を通して民謡を見つめ直し、後世に伝えていくこと。これまでに富山県の「筑子節」や宮城県の「豊年こいこい節」といった各地の民謡をアレンジし発表してきた。どの曲も、聴く人に「新しい民謡」という印象を与える。佐藤公基さんは「歌い方はこうだ、こう演奏しなければいけないといった固定観念を取り払い、自分たちの色を塗るようなイメージで取り組んでいる」。今回も同様に阿波よしこのと向き合った。本間さんは「この曲を子どもや海外の人に『かっこいい』と思ってもらえたら、さらに阿波踊りの枝葉が広がる。こういった繰り返しが伝統を守ることにつながるのではないか」と話す。
新春公演での初披露にあたり、本間さんは「阿波踊りの楽曲に箏の演奏が入るのは珍しい。和楽器らしい響きとコード感のある西洋のサウンドで表現するMIKAGEらしさを会場で感じてほしい」とPR。曲中には、よしこのとともに演奏されていた「阿波風景」と「盆の流し唄」のフレーズが取り入れられている。佐藤さんは「阿波踊りへの敬意、徳島の風景やにおいを踏襲し、シンプルに自分たちが出したい音から曲を作った。徳島をはじめとする多くの人に愛してもらえたらうれしい」。浅野さんは「初めてのダンス曲。自分たちらしい小節で歌ったよしこのと、お祭りらしく踊りやすい音楽を一緒に楽しみましょう」と来場を呼び掛けている。
公演は午後2時に開演。徳島新聞社や日本芸能実演家団体協議会(東京)などが主催し、県協会徳島支部の約500人が出演する。全席指定の前売り券は徳島新聞社や徳島新聞販売店で販売中。問い合わせは徳島新聞社事業部、電話088(655)7331(平日午前9時半~午後5時半)。