徳島県小児科医会 日浦恭一(徳島新聞朝刊 満1歳にて掲載)

 ロタウィルス感染症は従来、白色便性冬季下痢症と言われ、米のとぎ汁ようの白色の水様性の下痢が出ることが特徴でした。最近はこのような典型的な白色下痢を呈することが少なくなったと感じられます。

ロタウィルスの潜伏期間は24時間から72時間で、主な症状は下痢、嘔吐、発熱です。嘔吐は約2日間、下痢は約5日間持続します。下痢の頻度は1日に数回から十数回で水様性の下痢が多く見られます。

 感染様式は糞口感染で、直接糞便に触れることはもちろん糞便で汚染された手指や汚染された環境から間接的に口腔内に入ると考えられています。このウィルス10~100個程度で発症するとされます。発症後1週間は便中にウィルスが排泄されて感染源になります。しかし遺伝子増殖法で検査するとウィルスは3週間後でも検出されると言われます。

 ロタウィルス感染症は乳幼児に多いので感染後、脱水症の予防が大切です。治療は他のウィルス性胃腸炎の場合と同様に初期は経口補液を中心に、水分、電解質の補給に心がけ、経口摂取が可能になればできるだけ絶食や食事制限の期間は短くします。長期に絶食、食事制限を行うと小腸の委縮を起こし、かえって回復が遅れることが指摘されています。

 ウィルス性胃腸炎は家族内感染や病院、保育施設、学校、老人ホーム、養護施設などで集団感染を起こすこともあります。また患者と接触した医療従事者や養育者の手指を介して伝播することもあります。

 ウィルス感染に対する根本療法はありません。治療は対症療法だけですから、すべての人が感染予防を心がけることが大切です。