徳島県小児科医会 日浦恭一(徳島新聞朝刊 満1歳にて掲載)

 水痘は水痘・帯状疱疹ウィルスによる感染症です。伝染力が強く、結核や麻しんと同じく空気感染する疾患で、感染しやすく、感染すると不顕性感染がありませんからほとんどが発病します。最近、水痘に対しての誤った考え方が広く信じられているように思われます。今月は水痘について考えてみました。

水痘に対する誤解で目に付くものを上げてみました。

水痘は軽微な疾患であり、ワクチンで免疫を付けるよりも自然に罹った方が強い免疫が得られると考える人があります。しかし水痘は決して軽い病気ではありません。免疫不全状態の人が水痘に罹ると重症の水痘を発症して死亡することがあります。抗がん剤、大量のステロイド剤、免疫抑制剤などの治療中には免疫抑制状態になっていますから水痘に罹ると、大変なことになります。 

また出産直前の妊婦が水痘に罹ると、生まれてきた新生児に重症の水痘が発生します。さらに成人の水痘では多くが重症化することが知られています。

水痘はワクチンで予防できる病気です。なぜ水痘ワクチンの接種率は低いのでしょうか。上に述べたような誤った考え方が広く信じられており、さらに母子手帳のワクチンの欄に水痘の記載がないことや接種料金が高いことも接種率が低迷している原因かも知れません。

少し前の調査ですが徳島県は全国一水痘ワクチンの接種率が低い県でした。ワクチン接種には費用の他に時間や手間がかかります。しかし水痘に罹る危険性や他の人にうつすことを考えれば積極的にワクチンを接種して水痘を撲滅することが大切なことは明らかです。