徳島県小児科医会 日浦恭一(徳島新聞朝刊 満1歳にて掲載)

 発熱は多くの病気の大切な指標です。小児では特に感染症の初発症状であることが多く重要です。体温は家庭でも簡単に測定できますから良い指標になります。今月は体温および発熱について考えてみました。

人の体温は常に一定に保たれています。これは視床下部にある体温調節中枢によって体温が一定の範囲に設定されていて、熱の産生と放散のバランスをとっているからです。筋肉が収縮すると熱を産生し、発汗や皮膚の毛細血管を拡張すると熱を放散します。体内に発熱物質が存在すると体温調節中枢は設定温度を高くして、熱産生を増やし、熱放散を抑制します。その結果、体温は上昇します。

平熱はその子どもの普段健康な時の体です。昔、体温の測定は水銀体温計を用いて腋の下で10分間計測したものを基準にしてきました。最近はほとんどが予測式の電子体温計で測定されるために従来の基準で考えることが困難になりました。36℃代なら平熱です。38℃を超える場合には明らかな発熱ですが、悩ましいのが37℃代の場合です。

子どもは大人よりも新陳代謝が活発ですから成人よりも体温が高いことが普通です。また身体が小さくて様々な要因の影響を受けやすく、体温が変動しやすいことも特徴です。

 発熱は内因性発熱物質が体温中枢に働き、その設定温度が高くなること、熱の産生が放散を上回るとき、熱の放散障害、視床下部の体温調節中枢の異常などで起こります。

 発熱の最も多い原因は感染症ですが、同じ発熱でも新生児や乳児期早期の発熱は髄膜炎や敗血症などの重篤な疾患が隠れている場合がありますから注意が必要です。