徳島県小児科医会 日浦恭一(徳島新聞朝刊 満1歳にて掲載)
春から初夏には高熱を伴うウィルス感染症が多く流行します。中でもアデノウィルスは様々な症状を示して、その原因疾患として重要なものです。今月はアデノウィルス感染症について考えてみました。
アデノウィルスには6つの群と50種類以上の型があり、それぞれの型と症状の間には密接な関係があると言われます。
アデノウィルス感染症には咽頭炎、扁桃炎、気管支炎、肺炎などの呼吸器感染症を示すもの、咽頭結膜熱や流行性角結膜炎などの眼感染症を示すもの、出血性膀胱炎、胃腸炎、脳炎などを示すものなどがあります。さらに虫垂炎や腸重積症を起こした症例の腸管から本ウィルスが検出されることがあり、その原因に関係することが疑われています。このようにアデノウィルスは様々な疾患の原因になることが知られています。
アデノウィルス感染時の血液検査では白血球の増加や炎症反応が陽性になることがありますから、血液検査だけでは細菌感染と区別することは出来ません。症状や血液検査の結果だけで咽頭炎や扁桃炎などと診断して抗生物質を使用すると効果が見られないばかりか不必要な薬剤使用による不都合が起こることがあります。
最近はアデノウィルスの迅速診断キットが使用されて正確な診断出来るようになりました。夏季に多いと考えられたアデノウィルス感染症もこの診断キットを使用すると年間を通して存在することが判ります。
子どもにとって負担の少ない医療を行う上で正確な診断をすることはとても大切なことです。