徳島県小児科医会 日浦恭一(徳島新聞朝刊 満1歳にて掲載)

アデノウィルスは多彩な症状を示すことが特徴です。眼症状、呼吸器症状、胃腸症状、膀胱炎症状を示すものなどがあります。

中でも社会生活の上で伝染力が強く、最も注意が必要なのは眼症状を示す咽頭結膜熱および流行性角結膜炎です。

次に大切なのは咽頭炎や扁桃炎など呼吸器症状を示すものです。臨床症状には高熱に咽頭痛や咽頭発赤、扁桃の腫大が見られ、口蓋扁桃の表面に白色の滲出物が現れます。扁桃表面の白色の滲出物の存在がアデノウィルスを疑う手掛かりになります。

しかしこのような所見だけでは細菌性かウィルス性かの区別はつきません。咽頭炎や扁桃炎の場合には細菌感染を疑って抗生剤療法を行うことが一般的ですが、アデノウィルスでは抗生剤を使用しても効果はありません。

呼吸器症状を示すものの中でも下気道感染症を起こす場合には重症の肺炎が起こることがあり、より注意が必要です。

さらに比較的多いのがウィルス性胃腸炎です。ロタウィルスやノロウィルスに次いで多いのがアデノウィルスによる胃腸炎です。他のウィルスと同じ様に発熱、嘔吐、下痢が見られますがロタウィルス胃腸炎よりも軽症に終わるとされます。

出血性膀胱炎もアデノウィルスが原因の疾患ですが、血尿、排尿障害、頻尿などが見られますが、症状は2~3日で改善し、尿潜血も10日間位で自然に消失します。

アデノウィルスは飛沫、接触、経口感染を起こし、また伝染力が強いので、人ごみやプール、医療機関受診などでは感染の機会が多いので、予防のために手洗いやうがい、手指の消毒などを徹底することが大切です。