徳島県小児科医会 日浦恭一(徳島新聞朝刊 満1歳にて掲載)

ペットと付き合う上で動物が持つ感染症を避けて通ることは出来ません。ペットの口の中やネコの爪には重篤な感染症を起こす病原菌が居り、ペットについているノミやダニ、動物由来の寄生虫も大切な疾患です。

イヌ・ネコの持つ寄生虫で最も頻度の高いものは回虫です。衛生状態が良くなった日本では人の回虫を見ることはほとんどありませんが、多くのイヌ・ネコの腸管内には回虫が居ます。回虫は腸管内に寄生する寄生虫で、その糞便中に虫卵が排出されます。従ってイヌ・ネコの糞便で汚染された土壌や砂場にはイヌ・ネコの回虫卵が存在しますから、ガーデニングや公園での砂遊びの時に子どもには常に感染の危険性があります。

回虫は消化管に寄生する寄生虫ですが、本来の宿主以外の動物に寄生すると、虫卵から孵った幼虫は成虫になることが出来ません。この幼虫は本来生息する腸管から移動して様々な臓器に迷入することが知られています。肝臓や肺に行く内臓型、眼部に行く眼型、脳や中枢神経系に行く中枢神経型などの病型を示します。侵入した部位の症状が現れますから回虫症に特別な症状はありません。

イヌやネコを飼う時には回虫の有無をチェックして駆虫します。排便場所のしつけや糞便の処理に注意します。回虫卵は動物の毛にも付着することがありますからイヌ・ネコに触った手指についていることがあります。

予防には衛生教育やしつけを徹底することです。公園や砂場で遊んだ後やイヌ・ネコに触った後にはよく手を洗う習慣をつけることが大切です。