徳島県小児科医会 日浦恭一(徳島新聞朝刊 満1歳にて掲載)

 B型肝炎は血液を介して感染しますから出産時に母親から子どもに伝染します。昔からB型肝炎は母から娘に、娘から孫に、代々世代を超えて家族内で受け継がれてきました。このような出産を介する母子感染を垂直感染と言います。

 これに対して血液や唾液などの体液を介して家族内や社会生活の中で濃厚な接触や事故の時に感染することを水平感染と言います。

 日本でB型肝炎の伝播経路は垂直感染が主役でしたから、地域や社会に患者やキャリアが集中して見られる傾向がありました。

そこで日本ではB型肝炎の垂直感染予防によるB型肝炎の撲滅が図られたのです。その結果、母子感染によるB型肝炎は劇的に減少しました。しかしB型肝炎はその後も発生し続けています。これは水平感染の予防が行われなかったことによります。

B型肝炎のキャリアである母親から出生した新生児になんの処置もせずに放置すると80~90%は感染してキャアリアになると言われます。これを防ぐには出産直後の12時間以内に、遅くとも48時間以内にB型肝炎ウィルスの中和抗体を含む血液製剤、HBグロブリンの注射を行う必要があります。HBグロブリンの注射は出生直後と生後2か月に2回接種します。それとともに、B型肝炎ワクチンを生後2か月、3か月、5カ月に3回接種して免疫をつけます。

体内に侵入したウィルスはグロブリンで中和できますが、ワクチンを接種しておかなければキャリアである母親やB型肝炎ウィルスを持つ他の家族から水平感染を受ける可能性があります。母子感染予防の場合にもワクチン接種が大切なのです。