徳島県小児科医会 日浦恭一(徳島新聞朝刊 満1歳にて掲載)
日本では1986年からB型肝炎に対する母子感染予防が保険診療で行われるようになりました。HBグロブリンとHBワクチンの投与が行われるようになった結果、小児がB型肝炎キャリアになる頻度は大幅に減少しましたが完全にゼロになった訳ではありません。
現在、日本でB型肝炎ウィルスを持つ人の多くは母子感染予防が行われる前にキャリアになった人たちです。この人たちは今後、慢性肝炎や肝硬変、肝がんなどになる危険性がありますから定期的な検査を行い、もしウィルス量の増加が認められた場合には薬物療法を行います。
母子感染予防の処置によって小児のB型肝炎キャリアは減少しましたが、若年成人では性交渉によるB型肝炎の頻度が増加しています。特に都会を中心に性感染症としてB型肝炎が増加傾向にあると言われます。
また母子感染予防の処置を受けても感染してキャリア化する症例があります。ワクチン投与によっても免疫の出来ない症例があること、出産時の産科処置後に小児科への連携がうまく運ばれず、その後に水平感染を起こす例があるからです。
2010年の時点で、WHO加盟国の93%、179か国では全新生児にB型肝炎ワクチンを接種しています。先進国の中で全新生児にワクチンを接種していないのは日本だけです。
今後、世界に進出する時にほとんどの日本の子どもたちはB型肝炎ウィルスの免疫を持っていませんから感染の危険性が高くなります。日本でも母子感染予防だけでなく、世界基準による全新生児にB型肝炎ワクチンを接種することが望まれます。