徳島県小児科医会 日浦恭一(徳島新聞朝刊 満1歳にて掲載)
肺炎球菌は呼吸器感染症の原因菌として最も一般的な細菌です。この細菌は乳児期に鼻粘膜に定着する常在菌で肺炎や中耳炎、副鼻腔炎などの原因になる細菌ですが、血液中に入ると菌血症や髄膜炎などの侵襲性感染症と言われる重篤な疾患を起こしやすい細菌として知られています。
乳児の急な発熱で、最も心配されるのが侵襲性感染症です。重症であっても、その初期には明らかに鑑別できるだけの特徴的な身体所見がなく、血液検査でも初期には明らかな検査結果が現れないこともあります。救急疾患を取り扱う小児科医にとって最も不安を感じる疾患です。診断の難しさに加えて、外来で内服する程度の少量の抗生剤投与では侵襲性感染症の治療には不十分であることが示されています。
また肺炎球菌にはペニシリン耐性菌や多剤耐性菌が多く、治療に難渋する重症感染症の症例が増加しています。肺炎球菌の表面は莢膜に覆われていて人の免疫から逃れるシステムを持っています。肺炎球菌は莢膜の抗原性の違いに基づいて93種類の血清型に分類されます。肺炎球菌は莢膜を巧みに変化させることによって人の免疫機構を掻い潜り、その病原性を維持しているのです。
現在、小児用肺炎球菌ワクチンが実施されていますが、これまでは7種類の血清型の7価ワクチン(PCV7)が使用されていました。11月1日からはこれが13種類の血清型を含む13価ワクチン(PCV13)に変更になりました。今後、接種される小児用肺炎球菌ワクチンはすべてPCV13ワクチンが使用されます。
今月は肺炎球菌ワクチンについて改めて考えてみました。