芥川賞作家の平野啓一郎さんは、晩年の瀬戸内寂聴さんと最も親交のあった作家の一人で、7月に東京・帝国ホテルで開かれたお別れの会では、生前に本人から頼まれていたという弔辞を読んだ。先日、来県した平野さんに瀬戸内文学の魅力や、顕彰の在り方について語ってもらった。

 ―寂聴さんは書くことにこだわり、死ぬ直前まで現役の作家を続けた。

 すごいとしか言いようがない。書くというのは本当に大変なこと。しかも、ぼやっとしたものでなく、しっかりした小説を書こうとした。それを100歳近くまで続けるのは、なかなかまねのできることじゃない。本当に尊敬している。

 ―平野さんは弔辞で、こう語りました。「作家にとって書くということは、人生に何が起ころうと続く行為です。病気になろうと、政治に憤ろうと、笑い転げようと、美しい光景に打ち震えようと、しんみりと幼少期を回想しようと、将来に不安を覚えようと、人に腹を立てても、人を慈しんでも、孤独にさいなまれても、孤独を愛しても」…