徳島県小児科医会 日浦恭一(徳島新聞朝刊 満1歳にて掲載)
これまで日本で流行していたインフルエンザはAソ連型(H1N1)とA香港型(H3N2)とB型がありました。2009年にメキシコから出現して全世界に広がったA型H1N1パンデミックpdmウィルスの出現後にはAソ連型は見られなくなりました。
インフルエンザウィルスは毎年少しずつ変異しながら時に大きな変異が起こります。大きな変異が起こると、それ以前に流行していたウィルス型は消失すると言われます。2009年のA型H1N1pdmウィルスが季節性インフルエンザとして残り、ソ連型は消えました。
現在のインフルエンザワクチンに含まれるウィルス型はA香港型、A型H1N1pdm、B型の3種類です。ワクチンに含まれるウィルス株も流行ウィルスの変異に合わせて毎年少しずつ変更されています。ワクチンのウィルス株は全世界で前年に流行したウィルス型を参考にしてWHOで推奨株が決定されます。それを参考にして日本国内で製造するワクチンのウィルス株が決定されます。何年も同じワクチン株を使用していると流行ウィルスが変異するために、ワクチンの効果が落ちることになります。
ワクチンの効果は血液中に出来る中和抗体によるものです。抗体のでき方には個人差があります。インフルエンザ罹患歴のある成人ではワクチン接種後、抗体は速やかに上昇します。小児では抗体上昇に2週間程度かかります。
血液中の抗体は重症化を予防することに効果的です。ワクチンの作る血中抗体のみでは鼻咽頭粘膜での感染阻止効果は望めません。それでもワクチンで血液中に抗体を作っておくことは大切なことだと考えます。