インフルエンザに対する医療の進歩は近年目を見張るものがあります。最も著しい進歩は診断と治療に関するものです。診断については迅速検査キットを使用すると短時間で結果が判定出来ることです。その結果、発病から早期に診断をつけて治療を開始することが出来ます。さらに治療薬に関しても内服薬、吸入薬、点滴薬がそろったことで、患者さんに最も適した方法を選択すること出来るようになりました。
また薬剤耐性の問題もAソ連型ウィルスが消失したことで、現在流行中のA香港型とB型に対する薬剤耐性の心配なく、いずれの薬剤を使用しても効果に差は見られません。
しかしインフルエンザ治療中に発生する異常行動の問題はまだ解決された訳ではありません。異常行動には、普段と違うとっぴな行動をとる、うわごとを言ったり興奮したりする、意識がぼんやりする、意識がなくなる、幻覚が見える、妄想、けいれんなどがあります。異常行動は薬剤の副作用ばかりでなく、インフルエンザの症状として見られることがあります。治療開始後2日間は、このような異常行動が発生しやすく、注意する必要があります。特に10歳代の小児に抗ウィルス剤を投与する時には注意が必要で、発病後少なくとも2日間は子どもを一人にしない配慮が要ります。
日本におけるインフルエンザ診療は世界の他の国々に比べて大変優れたものです。それは検査や治療が自由に行うことが出来る現在の保険診療システムに支えられているのです。
しかしいくらインフルエンザの診療が進歩しても大切なことは予防です。早い時期にワクチンを済ませておきたいものです。