徳島県小児科医会 日浦恭一(徳島新聞朝刊 満1歳にて掲載)

 テレビやビデオ、パソコンやスマホに長時間接していると睡眠に大きな影響が現れます。メディアに熱中すると夜更かしになり、睡眠時間が短くなります。メディアに熱中することによる睡眠の変化は量的な不足だけでなく睡眠の質にも悪影響を及ぼします。

 睡眠はからだや脳の疲れを取るのに必要な生理現象ですが、睡眠時に分泌される成長ホルモンやACTH、コーチゾールなどの量や体温も睡眠に伴って変化します。これらの生理的な現象は睡眠不足や睡眠の質的な変化によって大きな影響を受けます。

夜遅くにメディアを視聴することは、光や音による刺激が人の視覚や聴覚を刺激して脳を興奮させます。脳が興奮して覚醒状態が過度に持続すると寝つきが悪くなります。その結果、睡眠は浅くなり、睡眠の持続性が悪くなり、熟睡感のないまま朝を迎えます。

夜更かしの翌朝には寝起きが悪く、昼間の活動性も乏しくなります。食欲低下や倦怠感、頭痛や頭重感を訴え、学習意欲や成績の低下にもつながります。

これらの異状は睡眠の時間的な不足による疲労回復の遅れだけでなく、体温の変化を始めとする自律神経機能や内分泌機能の異状に伴う身体的な異常状態であると考えられます。

 睡眠をとることは大切ですが、睡眠をとる時刻も重要です。夜間睡眠と昼間の睡眠では質的に異なります。夜間に遅くまで起きていることだけでも子どもにとっては有害です。メディアの内容によってはさらに過剰な興奮による自律神経機能の異状や精神的な異常状態となることが考えられます。無制限にメディアに接することの危険性を認識することが必要です。