徳島県小児科医会 日浦恭一(徳島新聞朝刊 満1歳にて掲載)
かぜには抗菌薬は効かないとよく言われます。これはかぜの原因がほとんどウィルス感染であり、細菌を殺すための抗菌薬を投与しても効果が望めないからです。熱があるからとか咽喉が赤いからと言ってウィルス感染症に抗菌薬を処方すると、効果がないだけでなく副作用の発生や耐性菌出現の危険性が増加します。
抗菌薬はウィルス性のかぜには効果はありませんが、細菌感染症の治療にとっては欠かすことの出来ない薬剤です。このような大切な薬剤が抗菌薬の不必要なウィルス疾患に安易に処方されていることがあります。今月は抗菌薬の重要性について考えてみました。
抗菌薬にはいくつもの種類があります。その代表はペニシリンですが、小児科外来で最もよく使用されるのはペニシリン系、セフェム系、マクロライド系と呼ばれる薬剤です。ニューキノロン系やテトラサイクリン系は成人には一般的な薬剤ですが、小児には特有の副作用が出ることがあって、その使用は一部の薬剤に限られます。
細菌感染症の治療を始める時には、まず感染症の診断、原因菌の推測から、最初に使用する抗菌薬を決定します。これが第一選択薬です。
第一選択薬の条件は有効性が高く副作用が少ないことですが、小児では剤型や服用性も大切です。またこれまでの抗菌薬使用時の副作用の有無や体質を考慮して薬剤を選択します。不必要な抗菌薬を投与しないことはもちろん大切ですが、重症の細菌感染症を見逃さないことは最も重要です。