まるで海の底から見上げたかのようなクラゲの乱舞。クラゲをお目当てに、毎年60万人もの人が訪れる=4月28日、山形県の鶴岡市立加茂水族館

 吸い込まれるような深いブルーの小宇宙。ライトアップされた水槽でクラゲがひたすら漂う。

 今やクラゲの展示で「世界一」と評される山形県の鶴岡市立加茂水族館は60種類、1万匹以上を飼育しているが、クラゲは偶然の産物だった。

 1997年に開いたサンゴ展。なぜか小さい浮遊物がウヨウヨしていた。調べたら、サカサクラゲの赤ちゃん。サンゴに付着して紛れ込んだらしい。

 そのまま育てて、別の水槽に移して展示したら「驚くほど人気を呼んだ」と奥泉和也館長(53)。それから世界中のクラゲを集め、飼育のノウハウを積み重ねた。今では海外の研究者が視察に訪れるほど。

 圧巻は直径5メートルの巨大水槽「クラゲドリームシアター」。2千匹ものミズクラゲが舞う。

 家族で秋田県秋田市から訪れた簾内貴之さん(38)は「クラゲの白と水の青とのコントラストに癒されます」。見る人も青い海の中でゆらゆら漂う快感を覚え、時を忘れてしまう。(写真と文・坂本秀明=河北新報社)