徳島県小児科医会 日浦恭一(徳島新聞朝刊 満1歳にて掲載)
小児の救急受診の動機で最も多い症状は発熱です。発熱を示す疾患には急を要する疾患もありますが、十分に時間をかけて症状を見極めてその重症度を判断する余裕のある場合もあります。今月は小児に多い発熱について考えてみました。
小児の発熱の原因で最も多いのは感染症ですが、膠原病、悪性腫瘍、外傷、熱中症に伴う発熱などが隠れていることもあります。
感染症に伴う発熱は、身体が中枢性に体温を高く設定した結果起こったものです。
身体にウィルスや細菌が侵入すると、免疫細胞から炎症性サイトカインと言う物質が出てきて、これが脳内視床下部の体温調節中枢を刺激します。体温調節中枢は、熱産生の促進と熱放散の抑制に働き、高体温の維持と共に体温が上がり過ぎないように調節します。
体内が高温環境になることで免疫機能はさらに活性化されます。また高体温の環境下ではウィルスや細菌の増殖が抑制されます。
炎症性サイトカインの働きは少量では痛覚の増強を、発熱を来す量では痛覚抑制を起こします。痛覚の増強は感染早期の警戒信号の役割があります。
さらにこのサイトカインは交感神経系や内分泌系を刺激して、心拍数や呼吸数が増加し、胃液分泌や胃運動を抑制します。代謝活動が亢進して熱消費量が増加しているのに食欲が減少して栄養摂取量が減少しますから体力の低下を招きます。
発熱は生体に不利な条件ですが、免疫機能を活性化させて抵抗力を増強するように脳が指令を出して高体温にしているのですから元気さえあれば解熱の必要はないのです。