牟岐町の子ども預かり事業「おひさまスクール」の職員が共有している津波警報発令時の対応マニュアルに、被害に遭う恐れがある避難方法が定められていることが分かった。スクール会場の旧牟岐小学校北校舎が避難場所に指定されているにもかかわらず、約600メートル離れた県立海部病院に避難すると記されている。専門家は「移動中に津波に巻き込まれる恐れがあり、危険だ」と指摘している。
対応マニュアルは、津波警報が出ると「児童は支援員と共に海部病院北側避難広場へ避難する」としている。だが、広場は旧牟岐小北校舎から徒歩で10分かかる。南海トラフ巨大地震の津波浸水想定では、牟岐町には地震発生から11分後に津波が到達し始め、高さは最大9・8メートルとなる。
地震対策を研究する徳島大地域創生センターの井若和久学術研究員は「避難場所や経路は複数確保しておく必要性がある」とした上で「海部病院までの避難経路は住宅街を通るため、建物の倒壊などで道がふさがれる場合もある。一次避難は北校舎に逃げるのが現実的だ」と指摘する。
町によると、スクールが北校舎で始まった2013年から、津波警報が出た際は海部病院近くの高台に避難する方針を決めていた。町は14年に北校舎を避難場所に指定した際、マニュアルを見直していなかった。
スクールは放課後の居場所確保を目的に、年末年始と祝日を除く平日に開設。毎日、町内の児童約30人が利用している。
大森博文副町長は「基本は北校舎に避難し、津波の到達時間や規模の情報から安全が確保できそうなら、海部病院に逃げるように改める。保護者にも周知していく」としている。