徳島県小児科医会 日浦恭一(徳島新聞朝刊 満1歳にて掲載)

 暑くなると熱中症の話題が多くなります。特に子どもは熱中症になりやすいと言われます。大人では高温環境下での肉体労働や激しい運動が、子どもでは過度の厚着や炎天下の車に閉じ込められることなどが熱中症の原因になります。高熱を伴う熱中症は生命に関わることもあり、早期に適切な処置が必要なことはもちろん、予防することが大切です。今月は子どもの熱中症について考えてみました。

 熱中症とよく似た言葉に日射病や熱射病と言う病名があります。これらは以前、熱中症の分類の中で使用されたもので、同じ日射病でも最も重症を示す場合と軽症を示す場合があり、救急現場では大きな混乱の元になります。さらに熱射病や日射病が熱中症と言う意味で使用されることがあり、混乱に拍車をかけます。今後は日射病や熱射病と言う表現を避けて熱中症を使うことにします。

熱中症の重症度は軽症からⅠ度、Ⅱ度、Ⅲ度と分類します。Ⅰ度は暑熱の環境下で大量の発汗に伴って脱水が起こり、電解質の喪失にも関わらず水分だけを補充した場合に、体内ナトリウム濃度の希釈が起こり一過性・限局性のけいれん、痛みを伴う筋肉のけいれん、こむらがえりが起こる状態で「熱けいれん」と言われます。また大量発汗によって軽度の脱水の結果、末梢血管の拡張による低血圧や除脈が起こると、めまいや立ちくらみ、失神が認められ、これを「熱失神」と言います。

熱中症のⅠ度は涼しい所で安静にして、水分や電解質を経口的に補給して経過を見ます。経口的に摂取できない時や、限局性のけいれんが続く時には輸液を行います。その後は涼しい所で無理な運動はせずに経過を観察します。