徳島県小児科医会 日浦恭一(徳島新聞朝刊 満1歳にて掲載)

熱中症は高温環境下に長時間居て、激しい労働や運動による大量の発汗で失われた水分や電解質が適切に補給されなかった時に起こります。

軽症の熱中症Ⅰ度であれば涼しい所で安静にし、水分や電解質の補給を行うだけで回復することがありますが、最も重症な熱中症Ⅲ度になると生命に関わる状態で、救命しても後遺症が残ることがあります。

熱中症Ⅱ度は中等症で大量の発汗による細胞外液の喪失、脱水、電解質喪失による循環不全がその病態です。呼吸数が多くなり、脈拍の増加、血圧の低下、吐き気や嘔吐、頭痛、めまい、脱力や軽度の意識障害が見られますが、体温の調節機構は保たれている状態です。

さらに重症になると著明な脱水と発汗の停止が起こり、体温調節機能が障害されて体が異常な高体温になります。その結果、中枢神経障害が発生し、さらに著明な脱水のために循環血液量が減少し、尿量の低下、うつ熱を生じ、組織の酸素消費量の増加および代謝異常から、多臓器障害の状態となります。

Ⅱ度の熱中症とⅢ度の違いは中枢神経障害、肝腎機能障害、血液凝固障害(DIC)が見られるかどうかです。どれか一つでも見られるものはⅢ度の熱中症です。

Ⅱ度の熱中症は病院に搬送して積極的に治療してⅢ度への進行を防ぐことが大切です。Ⅲ度の熱中症は生命に関わる状態ですから、病院でもICUに収容して集中治療する必要が あります。

高体温にけいれんや意識障害を伴う場合には脳炎・脳症、敗血症、髄膜炎などを区別する必要があります。熱中症は何よりも予防が大切な疾患です。