徳島県小児科医会 日浦恭一(徳島新聞朝刊 満1歳にて掲載)
ブドウ球菌は人の生活環境に広く分布する細菌で、人の皮膚や鼻咽腔の粘膜、腸管内にも多く存在する細菌です。ブドウ球菌は化膿する時の原因菌として医療現場では重要な細菌です。また抗菌剤に対する耐性菌の多い細菌としても知られています。今月はブドウ球菌感染症について考えてみました。
ブドウ球菌には多くの種類がありますが、細菌内部に様々な酵素や毒素を持っています。中でもコアグラーゼと言う酵素を産生する黄色ブドウ球菌は病原性の強い細菌で、化膿性病変の多くが黄色ブドウ球菌によって引き起こされます。
コアグラーゼを産生しない表皮ブドウ球菌は病原性の低い細菌ですが、免疫機能が低下した患者さんやカテーテルを留置している患者さんでは重篤な感染症の原因となることがあります。
ブドウ球菌は人の皮膚や気道にも常在菌として存在しています。ブドウ球菌がそこに存在していても健康な状態であれば問題はありませんが、免疫機能が低下した時、皮膚や粘膜が傷ついた時、手術などの侵襲が加わった時などにはこの細菌が体内に侵入しやすくなり、そこで感染症が成立します。
ブドウ球菌が血液に入って菌血症になると全身症状を起こします。さらに血液に乗って体内に侵入すると体内の様々な部位で化膿性の病変を作り、肺膿瘍や脳膿瘍などの重篤な病変を作ります。
またブドウ球菌には細菌の持つ様々な毒素や酵素によって出現する多彩な症状があります。ブドウ球菌による食中毒はエンテロトキシンと言う毒素による消化器症状です。ブドウ球菌は多彩な疾患を起こす重要な細菌です。