徳島県小児科医会 日浦恭一(徳島新聞朝刊 満1歳にて掲載)
ブドウ球菌は人の生活環境に広く分布する細菌で、人の皮膚にも存在します。皮膚に何らかの問題があると皮膚に感染して、水疱やびらんを発生します。これが伝染性膿痂疹「とびひ」です。
伝染性膿痂疹の原因で最も多いのはブドウ球菌ですが、A群溶連菌が原因になることもあります。湿疹や皮膚炎、虫刺されの痕を引っ掻いた所にブドウ球菌が付着すると感染して膿痂疹になります。さらにブドウ球菌が付着した手指で別の離れた所をかくとそこに感染を起こして広がります。遠隔地に飛び火する、すなわち「とびひ」です。
ブドウ球菌による伝染性膿痂疹は水疱を形成することが特徴です。溶連菌による伝染性膿痂疹は水疱を作ることはありません。これはブドウ球菌が産生する表皮剥脱毒素が作用するためです。水疱は掻くと簡単に破れて、水泡内で増殖したブドウ球菌が散布されて広がります。
伝染性膿痂疹は伝染力の強い病気です。乳幼児を含む小児に多く発生する疾患で、気温や湿度の高い夏季に多く発生します。
伝染性膿痂疹の治療は内服と外用の抗菌剤で行います。しかしブドウ球菌は多くの抗菌剤に耐性を持つことが知られています。抗菌剤の選択にあたっては耐性菌の存在を考慮して行います。
高温多湿の日本の夏では子どもが汗をかきやすく、虫刺されや湿疹の上にブドウ球菌が感染して伝染性膿痂疹が出来やすいものです。皮膚を清潔に保ち、皮膚や爪には常にブドウ球菌が付いていることを知って、引っ掻くことを防ぐことが大切です。