徳島県小児科医会 日浦恭一(徳島新聞朝刊 満1歳にて掲載)

インフルエンザ菌は莢膜を有する有莢膜型と莢膜を持たない無莢膜株に分類されます。病原性が最も強いのは有莢膜型の中で血清型がb型のもの(ヒブ)です。しかしb型ヒブ以外の有莢膜型や無莢膜型のインフルエンザ菌も様々な感染症の原因になることは他の細菌感染と同様です。

ヒブを代表とする有莢膜型による感染症はより重症の侵襲性感染症の形をとります。 インフルエンザ菌は上気道に定着した後に、本来細菌の存在しない血液や髄液、関節液内に侵入して菌の侵襲性感染症を起こし、菌血症、髄膜炎、関節炎を起こします。さらにインフルエンザ菌による侵襲性感染症には喉頭蓋炎があります。発熱、摂食障害、嚥下障害、急激に進む呼吸困難が特徴で、致命的な疾患です。これらのヒブによる侵襲性感染症はヒブワクチンによって減少します。

しかしヒブワクチンが普及するとヒブ以外の有莢膜型や無莢膜型のインフルエンザ菌による感染症の割合が増加します。

無莢膜型による感染症は肺炎や中耳炎など局所性感染の形を取ることが多く、上気道炎、気管支炎、肺炎、中耳炎などが特徴です。上気道のインフルエンザ菌が耳管を通じて中耳腔に侵入して炎症を起こすもの、下気道に侵入したインフルエンザ菌が肺炎を起こすものが代表的な疾患です。

小児の細菌感染症の原因菌の種類や型は多くのワクチンが普及するとともに変化します。中耳炎の原因も無莢膜型インフルエンザ菌が増加傾向にあると言われます。人の咽喉や鼻腔にはインフルエンザ菌以外に肺炎球菌や溶連菌、ブドウ球菌も存在します。ワクチンによって疾患が変化する可能性があります。