徳島県小児科医会 日浦恭一(徳島新聞朝刊 満1歳にて掲載)

ヘモフィルスインフルエンザ菌b型(Hib、ヒブ)は小児の細菌感染症の重要な原因菌です。日本ではこの細菌に対するワクチンの開始は欧米に20年遅れたと言われます。

日本でヒブワクチンが使用できるようになったのは2008年12月でした。最初はワクチンの供給量が少なく、希望する子ども全員に接種することが出来ませんでした。

その後、2010年11月に公費負担制度でヒブワクチンが無料で接種出来るようになりました。さらに2013年4月からヒブワクチンが定期接種になりました。

インフルエンザ菌による侵襲性感染症の頻度はヒブワクチン導入後、明らかに減少しています。全国10道県のヒブワクチン導入前後のヒブによる侵襲性感染症の発生に関する調査では2008~2010年に比較して2011年57%、2012年92%、2013年98%の減少が見られます。2013年に発生したヒブの侵襲性感染症は3例であり、いずれもヒブワクチンの未接種例であったと言われます。

ヒブワクチンは生後2か月から始めて生後3か月と4か月に3回接種し、3回目終了後7か月以上後に1回追加接種します。

ヒブ莢膜多糖体に対する抗体は胎盤を通して移行しますが、生後4か月頃より減少して感染の危険性が高くなります。乳児期早期にヒブワクチンを接種する事によって、感染の危険性を回避することが出来ます。さらにヒブワクチンを3回接種した後にもヒブ髄膜炎を発病した症例が報告されています。初回免疫3回だけでは抗体が低下して発病の危険性が増加します。従って1歳過ぎに追加接種を確実に行うことが大切です。すべてのワクチンを確実に実施することで不幸な子どもを一人でも減らすことが出来るのです。