徳島県小児科医会 日浦恭一(徳島新聞朝刊 満1歳にて掲載)
おたふくかぜには様々な合併症があることが知られています。最も多いのは神経系の合併症でウィルス性髄膜炎です。髄膜炎を起こすウィルスの中で最も多いのがおたふくかぜウィルスであると言われます。
髄膜炎の代表的な症状には発熱、頭痛、嘔吐がありますが、おたふくかぜに伴う髄膜炎では典型的な症状が見られない場合があり、またこの髄膜炎は特別な治療なしに自然治癒します。一般におたふくかぜによる髄膜炎は予後良好な疾患とされます。
おたふくかぜ髄膜炎は耳下腺の腫脹前にも腫脹後にも発生する例があります。その発病時期に一定のパターンはありません。また髄膜炎の症状がなく、髄液検査だけで異常を指摘されることもあります。
これに対しておたふくかぜの合併症で問題になるのは難聴です。ウィルスが内耳を侵すために、おたふくかぜによる難聴は永久的に持続します。おたふくかぜの難聴の多くは片側性ですが、時に両側性に侵されることがあります。難聴の発生頻度は子どもでは1000人に1人ですが、成人では400人に1人発生すると言われ、成人のおたふくかぜも大きな問題を抱えています。
また、おたふくかぜの合併症に精巣炎や卵巣炎があります。思春期以後の男性のおたふくかぜでは約25%に精巣炎が見られます。精巣炎が回復した後、精子形成能が低下すると言われますが、不妊になることはまれです。思春期以後の女性では乳腺炎や卵巣炎が見られますが、男性の精巣炎ほどは多くないとされます。このように成人でもおたふくかぜは問題の大きい疾患で、予防が大切です。