徳島県小児科医会 日浦恭一(徳島新聞朝刊 満1歳にて掲載)

全国的に出生率が低下して子どもの数が減少しています。原因は色々考えられますが、生まれてきた子どもを本当に大切に扱っているのか改めて考えてみる必要があります。

女性の社会進出や地位向上によって出産年齢が高くなることでハイリスクの妊娠や分娩が増加することが懸念されます。今月はこのような出産や新生児に関する問題について考えてみました。

出産に伴って子どもの体内では解剖学的および生理学的に大きな変化が生じます。胎児は呼吸も循環も栄養も完全に母体に依存している状態です。出産後の新生児は完全に母体から自立した個体となります。この時に新生児は体内で起こる大きな変化に対応して自立し、環境に適応します。

新生児は産声を上げることで肺呼吸を確立し、臍帯から血液が途絶えることによって心循環器系が独立します。また栄養を摂取するためには自力で経口哺乳する必要性に迫られます。

現在、日本では妊娠中の母体管理は定期的に行われていますから、出産までに胎児に関する多くの情報が得られます。しかしそれでも出産して初めて分かる問題もありますから、異常なく生まれた新生児でも出産後に呼吸や循環、栄養の問題を解決する必要に迫られることがあります。

出生直後に重い症状を抱えた新生児は新生児専門医に委ねられます。出産直後に女性が抱える悩みは重症なものばかりではありません。子どもの些細な症状や育児に関する悩みも多く見られます。このような悩みに答え女性を支えるのは産科医や助産師とともに一般の小児科医です。