国際人権の専門家で英エセックス大研究員の藤田早苗さんによる講演会「世界から見た日本の人権―表現・報道の自由、ジェンダー、貧困」が9日、徳島市のとくしま県民活動プラザで開かれる。藤田さんは国際基準に照らして人権が守られていない日本の現状を指摘し、国際人権に対する意識を浸透させることの重要性を訴える。
県内の有志でつくる実行委員会が主催。講演会は午後2時からで、参加費1000円(学生は無料)。予約は不要。オンラインでも視聴可能で、希望者はメールsaito.takahito@gmail.comで申し込む。問い合わせは実行委の深田さん、電話090(3784)7254。
【日本の課題や改善点聞く】人権の概念を誤解 権利主張に否定的
藤田さんは国連人権機関に情報提供しながら会議や審査の傍聴を続けており、昨年12月には「武器としての国際人権―日本の貧困・報道・差別」を出版した。9日の講演を前に、世界からみた日本の課題や改善点について聞いた。
日本は主な国際人権条約九つのうち、「女性差別撤廃条約」や「子どもの権利条約」「障害者権利条約」など八つの条約を批准している。条約内容の遂行に対して政府は責任を負うが、日本政府はそれぞれの条約機関から勧告を受けても改善に動くことは少なく、真摯(しんし)に向き合っていない。 国内では、人権の概念が誤解されていると感じる。日本の人権教育は、思いやりの心情を育てるなどの道徳的教育と同一視されている。だが、本来の人権教育とは自らの権利を知り、その主体者として行動するための知識を学ぶことだ。
人権についての正しい認識がないため、日本の人々は権利を主張することに否定的なイメージを持っているようだ。人権を実現する義務が政府にあることが抜け落ちているから、貧困など問題が起きれば「自己責任」ばかりが強調される。
政府に迎合しがちで、国際条約や国際人権について十分報じないメディアにも責任はある。政府とメディア、市民。あらゆるレベルでの底上げが必要だ。人権の視点が身に付けば社会のさまざまな事象を見て「おかしい」と思う人が増え、弱者の声にも気付くようになると思う。