徳島県小児科医会 日浦恭一(徳島新聞朝刊 満1歳にて掲載)

人の体は摂取された食物に含まれる栄養素で構成されます。また摂取した食物を消化・吸収し、その分解の過程で発生するエネルギーを利用して生命活動を行います。骨格、筋肉、血液や内臓など身体の成分は栄養素で構成されています。

私たちは食物を食べることで生きています。食物を摂取出来なければ生命活動を行うことは出来ません。さらに食事は社会生活上も大切な役割を果たしています。今月は離乳食から食事の大切さについて考えてみました。

新生児期から乳児期早期の栄養は母乳やミルクだけです。生後5~6か月過ぎになると水に溶けた栄養だけでは不足し始めますが、成人と同じ様な固形物を食べることは出来ません。乳児が大人と同じような固形物を摂取出来るようになるまでの食物が離乳食です。

離乳食と言う考え方は欧米にはありません。欧米ではスープが日常的に食べられていて、パンをスープに浸せば乳児でも食べることが出来ますから特別な離乳食は必要ありません。

これに対して日本では米も野菜も固形物を煮て食べますから、乳児がこれらを食べるにはスープ状にする必要があります。軟らかく煮てすり潰す、裏ごしするなどの手間をかけて離乳食を作るのが日本です。

離乳食開始の時期には個人差がありますが、最も多いのは生後5か月です。昔よりも1か月ほど遅くなっています。消化機能には個人差がありますから、離乳食開始時期にも差があるのが当然ですが、あまり遅くなると水に溶けた栄養だけでは栄養量が不足し、母乳に少ない鉄分なども不足します。固形物で効率よく栄養を摂取するためには適切な時期に離乳食を開始することが大切です。