徳島県小児科医会 日浦恭一(徳島新聞朝刊 満1歳にて掲載)
大人にも子どもにも食事が大切なことは言うまでもありません。これは食事が単に栄養を取るためだけでなく、子どもの時から食事を通して正しい習慣をつけるためです。
食事習慣をつける第一歩は離乳食です。離乳食の目的は固形物を噛み切り、すり潰し、唾液を混ぜてドロドロにして飲み込むことが出来るようにすることです。歯が生える前でも口の中でモグモグしていれば、やがて食物は軟らかくなり飲み込むことが出来ます。
最近、軟らかい物を好み固いものを食べられない子どもが増えています。離乳食を進める時に噛む習慣がついていないために固形物を食べることが出来ないのです。
固いものを食べない子どもは噛む回数が少なく、口の中に食物を留める時間が短く、唾液の分泌が少なくなります。唾液が少ないので食事中にやたらに水を飲み、水で食物を流し込むような食べ方になります。
唾液は口の中をいつも清潔に保つとともに口腔内の乾燥を防ぎます。唾液の分泌が少なくなれば消化力が落ち、口の中は乾燥しやすく、呼吸器系の免疫力も落ちます。
よく噛むと顎の力や首の力が強くなり、その上に乗る脳の発達が促されると言われます。さらに口唇や顔の筋肉も発達しますから発声や表情を作る筋肉も発達します。
食事を介して人とコミュニケーションを取り、社会性を身につけます。食卓を囲む家族団らんは社会そのものです。家族と一緒にする食事は楽しく、おいしく食べることが出来ます。よく噛むことを覚えると口周囲から表情も豊かになり、話し方も上手になります。離乳食を進めることは子どもの発達にとってとても大切なことです。