徳島県小児科医会 日浦恭一(徳島新聞朝刊 満1歳にて掲載)
食物アレルギーの中で生命に危険が及ぶ可能性のあるのがアナフィラキシーと言われる病態です。アナフィラキシーの出現する原因食物を正確に診断して、適切かつ必要最低限の食物除去が求められます。
アナフィラキシーには皮膚症状、粘膜症状、消化器症状、呼吸器症状、循環器症状を含めた全身症状が見られます。それぞれの症状には特徴があり、その重症度には軽症から中等症、重症の差があります。
皮膚症状の軽症では少数の蕁麻疹や軽度のかゆみ、局所的な紅斑ですが、全身に拡がる蕁麻疹や紅斑、強いかゆみなどは中等症です。
粘膜症状の中で、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、口の中の違和感、唇のはれ、眼のかゆみや眼の充血は軽症ですが、顔全体が腫れあがり、まぶたのはれるものは中等症です。
症状が皮膚や粘膜症状に留まる限りはアナフィラキシー症状でも軽症から中等症です。しかし皮膚・粘膜症状が全身に拡がる時には他の症状が加わって重症度が変わる可能性がありますから注意する必要があります。
消化器症状が見られる時は中等症です。腹痛や吐き気、下痢が見られます。我慢できない腹痛や繰り返す嘔吐は重症です。
呼吸器症状は軽くても咳が出れば中等症です。かすれ声、犬が吠えるような咳、持続する強い咳き込み、呼吸困難、ゼーゼーする呼吸などは重症です。
ぐったり、意識もうろう、尿便の失禁、血圧低下やチアノーゼなどの全身症状があれば重症です。アナフィラキシーは短時間に変化します。症状が増悪する場合には治療を急ぐ必要がありますから救急搬送の適応です。