「あの楽器をやってみたいな」。人の身長を超すサイズと、腹の底まで響く重低音。中学校の入学式で、コントラバスに初めて出合った。新入生を歓迎するオーケストラ部の演奏にも魅了され、早速入部した。

 一目ぼれした楽器と共に歩んで39年。京都フィルハーモニー室内合奏団のコントラバス奏者として活躍している。「今の気持ちも時間を忘れて練習したころのままですよ」と笑顔で話す。

 高校、大学はまさに音楽漬けの日々だった。クラシックのみならず、ジャズやタンゴのバンドにも加わり、腕を磨いた。

 1992年、京都フィルに入団する。京都フィルは演奏技術が高い上、落語と共演するような革新性も持ち合わせていた。「ここなら自分のやりたいことが全部できると思った」と振り返る。

 年間10回を超す自主公演をはじめ、依頼された公演などにも出る。演奏するには人員や演出に合わせて曲を編曲しなければならないが、その作業も手掛ける。「音楽を始めた頃から楽譜を見るのが好きだった。自分が編曲したのが音になるのはうれしいことですね」

 編曲の経験が高じ、2011年から本格的に作曲に取り組み始めた。国内の作曲コンクールへ積極的に出品し相次いで入選を果たした。「作曲は一から音を作り出す自由さが魅力です。フィルの知名度を高めるためにも、何とか素晴らしい曲を作りたい」と意気込む。

 多忙で帰省する機会も少ないが、「徳島の風土に大きな影響を受けている」。作った曲には徳島の空気感が混じり込んでいるという。

 今の一番の夢は徳島の曲を作ること。「タイトルも構想も考えています。その名は交響詩『AWA』です」。

 かなざわ・やすのり 徳島市出身。徳島中、徳島市立高、大阪教育大特設音楽課程卒。コントラバス奏者として京都フィルハーモニー室内合奏団で活動し、個人リサイタルなども手掛ける。作曲では2014年11月、第3回洗足現代音楽作曲コンクールに入選した。滋賀県栗東市在住。51歳。