徳島県は3日、米国を除いた11カ国による環太平洋連携協定(TPP)と、日本と欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)が発効すると、県内の農林水産物の生産額が合算で、最大で年間26億5千万円減るとの試算を発表した。安い海外産品の流入により、牛肉や木材を中心に生産が落ち込むと分析している。

 TPP、日欧EPAとも来年の発効が見込まれている。額は国が昨年12月公表した手法を基に算出した。

 TPPでは、最大で対象9品目の総生産額422億円(2015年度)の3・7%に当たる15億8千万円の減少を見込む。最も影響が大きいのは牛肉の3億9千万~7億8千万円で、影響は生産額73億円(同)の1割を超える可能性がある。

 合板などの木材は6億1千万円、豚肉で最大1億7千万円の減少を予測。水産物でもカツオやマグロなどで1千万~2千万円の減少を見込んでいる。

 県が15年12月に試算した米国を含むTPPの農林水産物への影響額は、最大23億4千万円減るとされていた。

 日欧EPAの影響額は最大で、対象8品目の総生産額283億円(15年度)の3・8%に当たる10億7千万円の減少となる見込み。減少額は構造用集成材などの木材が5億2千万円、牛肉が3億6千万円、豚肉が1億7千万円などとしている。

 県は商工業分野への影響についても試算を公表。貿易や設備投資の拡大により、県内総生産額(15年度は2兆9955億円)でTPPが446億円、EPAが297億円の計743億円(2・48%)のプラス効果があり、就業者数もTPPで2500人、EPAで1600人の計4100人増えるとみている。業種別の影響については分析していない。

 県は3日、県庁で関係部局による県経済グローバル化対策本部会議を開き、飯泉嘉門知事が発効を見据えた基本方針の策定と来年度予算編成での対応を指示。「グローバル化は貿易自由化とインバウンド(訪日外国人旅行者)の活用がポイントだ。まず守りを固め、攻めに転じてほしい」と話した。

 慎重に見極めを

 徳島経済研究所の荒木光二郎専務理事の話 TPP、EPAとも県全体でみると、輸出入などの拡大により商工業を中心にプラスの経済効果があることが数値で示された。ただ農林水産業については、県内経済でのウエートが全国と比べて高いため、マイナスの影響が全国平均より大きく出ている。食料自給率の低下も懸念される。農林水産業は零細な事業者が多いだけに、影響について各関係機関は慎重に見極めていく必要がある。