キュウリやトマト、ジャガイモなど毎日の食卓に欠かせない定番から、ズッキーニやアーティチョークといった珍しい野菜まで、経営する店舗には豊富で個性的な食材が所狭しと並ぶ。いずれの商品も東京・多摩地域の農家が育てた地元の生鮮野菜だ。
大学時代、国立市の商店街活性化に取り組むサークルに所属し、活動を通して社会貢献を果たす醍醐味を知った。そうした経験を基に、地域の農家と住民をつなぐ取り組みを始めて4年。現在はJR中央線の国立、国分寺、立川の各駅近くに直営店舗と飲食店を計4店展開し、年間売り上げは2億円を超える。
活動の柱には「緑豊かな多摩地域の自然環境を、将来世代に残したい」との思いがある。「住民の理解がなければ都市農業の持続的な発展は見込めない。このため『地元の野菜を地元で食べる』というライフスタイルを根付かせようと頑張っています」
もとより、いかに社会的意義のある取り組みでも、気持ちだけでは長続きしない。そこで、住民の声をきめ細かく農家に伝え、新たな商品開発を進めるなどしながら、ビジネスと社会貢献の両立を目指す。その上で「10年後には直営店舗を20~30店まで増やしたいですね」と意気込む。
古里の地域振興に不可欠なのは、徳島らしさの追求だと力を込める。「上勝町などのように独自性のある取り組みは全国から注目され、人材も集まる」と話し、「地域の歴史や文化を見つめ直し、それぞれの特長を生かしたまちづくりや産業育成を進めてはどうか」と助言する。
「徳島には世界的な優良企業もあるし、チームラボの猪子寿之社長ら面白い人も出てきている。後は、それら地域資源をどのようにつなぎ合わせて発信していくか。戦略に知恵を絞ってほしい」。
しぶや・ゆうすけ 藍住町出身。徳島北高校、一橋大商学部卒。機械加工製品などを扱う商社で5年勤務した後、2011年4月に東京・多摩地域の農家から生鮮野菜を集荷し、地元住民に販売するベンチャー企業「エマリコくにたち」を設立。取締役副社長として直営店舗での小売事業を統括している。東京都国分寺市在住。32歳。