カテーテルを通して狭まった血管を広げる頸動脈ステント留置術(新野部長提供)

 脳梗塞にならないために 

 【質問】77歳の夫が脳の磁気共鳴画像装置(MRI)検査を受けたところ、血管が細くなっている部分があり、いつ脳梗塞を起こすか分からないと診断されました。糖尿病や血圧、血液をさらさらにする薬をそれぞれ服用しています。一度狭くなった脳の血管を治す薬はないのでしょうか。また、脳梗塞にならないために、どんなことに注意すれば良いのか教えてください。

 県立中央病院脳神経外科(徳島市蔵本町1)
 新野清人部長
 
 食事療法や禁煙が重要

 【答え】脳梗塞となり得る血管には、脳の中の血管と頭蓋骨の外側にある頸部の血管があります。それぞれについてお答えします。

 まず、日本人の脳内の血管は、高血圧が原因で狭くなること(狭窄)が知られています。多くの場合、「穿通枝」と呼ばれる非常に細い血管内に狭窄が生じますが、脳内のMRA(MRI装置で頸部や脳内の血管を映す方法)で確認するのは困難です。医師の指摘が「脳の中の血管が細い」ということであれば、MRAで映し出すことができる主幹動脈といわれる比較的太い動脈が狭くなっていたと推察できます。

 狭くなった血管を元のように広げる薬はありません。薬物治療でできることは、細くなった血管がさらに狭くならないようにすること(伸展予防)です。

 血液をさらさらに保つ抗血小板剤は脳梗塞の再発予防に使われていますが、臨床研究では伸展予防の効果を併せ持つ薬もあることが分かっています。

 脳梗塞にならないためには、薬物療法に加えて▽高血圧や糖尿病の予防、管理▽動脈硬化の伸展を予防するためのコレステロール値の管理▽適正なカロリーや塩分制限など食事療法▽適度な水分摂取▽禁煙と節酒-などが重要です。

 狭窄による症状があれば、カテーテル(細い管)を血管内に通し、内側から風船やステント(円筒状の金属器具)で狭くなった動脈を広げる方法があります。専門性の高い治療法のため、手術による危険性以上に予防効果や意義が認められる場合に受けられます。

 次に頭蓋骨の外側の頸部頸動脈について説明します。頸動脈の中でも、脳内につながる「内頸動脈」と、顔や頭皮など脳の外側につながる「外頸動脈」の分岐する部分は特に狭くなります。従来、頸動脈分岐部の狭窄は欧米人に多い傾向でした。しかし、脂肪分や動物性タンパク質の過剰摂取など食生活の欧米化によって、近年は日本人にも増えています。残念ながら薬だけで改善させることは困難です。

 ただし、脂質異常症の薬が持つ抗炎症作用は動脈硬化の病変を抑えて縮小、安定化させると報告されています。脂質異常症薬には、エイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)など魚類に多く含まれるオメガ3系多価不飽和脂肪酸があります。心血管疾患が効果的に抑制されたとの臨床結果もあり、試す価値はあると思います。

 外科治療もよく行われます。比較的太い動脈の内膜にコレステロールが入り込み、蓄積したかゆ状の塊(アテローム動脈硬化巣)を切除する手術や、カテーテルを通して狭まった血管を広げる「頸動脈ステント留置術」<図参照>があります。

 何らかの症状があるか、無症状でも正常な状態に比べて血管の太さが70~80%以上狭くなって危険であれば、外科治療も有効といえます。いずれの手術にも長所と短所はありますので、主治医とよく相談し、専門機関を受診してみてはいかがでしょうか。