徳島県小児科医会 日浦恭一(徳島新聞朝刊 満1歳にて掲載)
発達障害の子どもたちは乳児期から視線が合わないとか人見知りをしないなどの気になる症状が見られるものです。このような気になる症状を持つ子どもについては注意して経過観察する必要があります。
しかし単に様子を見ているだけでは子どもが養育環境に適応できないことがあります。発達障害児が不適切な環境に置かれて、失敗体験ばかりを積み重ねると、自信喪失して障害が重くなり二次障害を招く可能性があります。発達障害が疑われる場合には早期に専門医の正確な診断を受けて、少しでも環境に適応しにくい兆候があれば、適切な治療教育を受ける機会を与える必要があります。
発達障害の特徴は認知機能の障害と考えられます。他人の考えていることを想像することが出来ず、人の表情や顔色を読むこと、その場の雰囲気を読むことが苦手です。場違いな発言や行動は集団社会の中で生活することを困難にします。順番やルールを無視した行動が見られることで集団の秩序の乱すことになり、いじめの原因になることもあります。失敗体験を積み重ねることで二次障害を招く可能性が高くなります。
しかしこだわりが強く、頑固な点で一度やり始めたことをとことん追求する性格などは適切な指導次第で貴重な才能を引き出す可能性があります。光や音に対する特殊な感受性は芸術分野での特異な才能を示すこともあります。個性的な性格は研究者や特殊技術を必要とする職人や芸術家などに向いているかもしれません。早期に発達の特徴を診断して適切な治療環境に置くことが大切です。