死者220人を超える平成最悪の被害をもたらした西日本豪雨からあすで1カ月になる。いまだ多くの人が避難生活を余儀なくされ、猛暑の中での復旧作業が続く。大きな打撃を受けた農業や中小企業などの復活も道半ばだ。

 国や自治体は被災した住民や企業の状況を把握し、効果的で息の長い支援を続けていく必要がある。

 豪雨への対応については、さまざまな課題が見えてきた。今回の被害の特徴は、逃げ遅れて犠牲になった住民が相次いだことである。

 まず問われるのは、警報や避難の情報を出すタイミングが適切だったかどうかだ。

 4千棟以上が浸水した岡山県倉敷市真備町地区では、市の避難指示のわずか4分後に堤防が決壊した。

 大規模な浸水被害が起きた愛媛県大洲市で、市が住民に避難指示を出したのは、肱川(ひじかわ)の鹿野川ダムが大量放流を開始する5分前。上流にある野村ダムと共に記録的な大雨に対応できない操作規則だったことも明らかになった。

 徹底的な検証とともに、対応の見直しを急がなければならない。

 一方、情報を受け取る住民の意識に問題はなかったか。

 気象庁は雨が強くなる前の7月5日に「記録的な大雨になる」と警告。6日以降は11府県に大雨特別警報を出し、最大級の警戒を求めた。

 だが、どれだけの人が命の危険が迫っていると受け止めただろうか。人は直面する異変や不安に「大したことはない」と考える「正常性バイアス」が働くとされる。

 気象情報は精度が高まり、信頼度は増している。ところが、大雨特別警報をはじめ、土砂災害警戒情報や記録的短時間大雨情報など種類が多いため、住民には分かりにくい。「何十年に1度」という言葉が慣用句になって危機感を持てなくなっているとの指摘もある。

 では、どうすれば早期避難に結びつくのか。広島市安佐北、安佐南両区の5地区の対応が参考になる。

 両区は4年前の土砂災害で70人以上の犠牲者が出た。この教訓を踏まえた、住民たちの防災の取り組みが早期避難につながり、人的被害はなかった。安佐南区の「八木・緑井(みどりい)」地区では、避難指示が出される前に、警戒区域に指定された世帯に避難を呼び掛けている。

 この地区では、自主防災会連合会が独自に危険箇所や避難経路を調べて防災地図を作り、約5千世帯に配るなど防災意識を高めてきた。

 市町村合併や行政改革で自治体職員1人当たりの担当範囲が広がり、きめ細かな対応が難しくなっている今、求められるのは地域の力である。

 平時に防災について意見を交わし、いざというときは地域のみんなで避難する―。人口減少や少子高齢化で地域コミュニティーの崩壊が進む中、防災で住民同士のつながりを取り戻したい。