徳島を元気にする事業アイデア・プランコンテスト「とくしま創生アワード」の最終審査会が27日に徳島市で開かれる。本年度は2部門に計46件、小中高大学生対象の「ひらめき賞」に39件の応募があった。書類審査を通過した9組と学生賞1組、ひらめき賞優秀賞の3組が最終審査会に臨む。昨年度、各部門のグランプリに選ばれた2組の近況を紹介する。
昨年度グランプリの2組の歩み
◆プラン部門・ロジカルプロセス株式会社(石井町) 新生児検査事業参入目指す
液体の検体に含まれる複数の成分を網羅的に測定できる質量分析の技術を、本格的に医療へ活用する事業計画を発表し、プラン部門グランプリに選ばれた。従来は複数の検査キットを使って項目ごとに調べていた手順を効率化し、患者の負担軽減を目指している。代表取締役の栃澤欣之(よしゆき)さん(33)は受賞後、事業開始に欠かせない質量分析装置を使用できる環境を整えるために奔走してきた。
自社の研究に装置を使えるかどうか、県内各地の研究機関などを回って調査した。昨年末から、県立工業技術センターにある「高速液体クロマトグラフ質量分析装置」を利用できるよう、センターの担当者の協力を得て準備を整えている。
来年をめどに、赤ちゃんの先天性代謝異常といった病気を早期発見・治療するために行われる「新生児マス・スクリーニング」事業への参入を目標に定める。センターの装置を使って、アミノ酸や糖といった30種類程度の成分分析と手法の研究を進めたい考えだ。今後はデモ分析を行い、今春以降の利用開始を目指す。
装置使用のめどが立ったことは、事業を始める上で大きな一歩。「装置は高額で一般に貸し出してもらうのは容易ではない。アワードを通してできた人のつながりがあって実現できた」と言う。
新生児マス・スクリーニング事業が軌道に乗れば、装置の購入など次のステップを見据えて資金調達を行う計画。より高精度の装置を用いて健康診断事業に進出するほか、糖尿病やがんなどの病気の兆候が分かる新たな分析手法の開発に向けたデータ収集を行って事業を拡大していく。地元への貢献も視野に入れており「優秀な技術者ら徳島の人材が活躍できる企業となるよう努めたい」と語った。
◆アイデア部門・福本和生さん(徳島大6年、徳島市) 育児支援アプリ初期版公開
赤ちゃんの泣き声に連動して泡のイラストを出現させ、声を可視化するスマートフォンのアプリケーション「あわベビ」を開発し、産後うつなど子育ての課題解決につなげるアイデアでグランプリを受賞した。
昨年9月に運営会社「クロスメディスン」(徳島市)を設立。徳島大医学部生の福本和生さん(26)=6年=と中井洸我(こうが)さん(22)=4年=が代表取締役・共同代表を務め、学生を中心に、外部のデザイナーや子どもを持つ女性アドバイザーら計10人が携わる。
現在はアプリ提供サービス「アップストア」に初期版を公開している。海中をイメージしたデザインで、声の周波数によって形が違う5種類の泡のイラストが浮かび上がる。登録すれば泣き声の録音、記録や分析が可能。音量の調節など、誰でも使いやすい操作性にこだわった。
最終審査以降に行った資金調達のためのクラウドファンディングでは県内外から約500万円が集まった。福本さんは「子育て支援を重要視する風潮を感じる。実現に取り組む若者を応援してくれる人たちの期待に応えたい」と言う。
改良に向けて目指すのは、赤ちゃんの泣き声をリアルタイムで観測できる人工知能(AI)の開発。機械学習を導入し、泣き声と感情、その対処法まで「見える化」する。今夏の完成、実証実験開始を予定している。将来的には、赤ちゃんが空腹の場合に特定のミルクや商品を勧めるといった機能の追加も検討中。より良いサービスになるよう試行錯誤は続く。
福本さんは「子育てに関する情報は膨大にあり、きっかけなく自分の子どもに適した選択肢を導くのは難しい。必要な情報にたどり着くための入り口として、あわベビを使ってもらえるとうれしい」と話した。
ひらめき賞の入賞者
【優秀賞】とくしまマルベリー(川島高1年、3人)、伊藤希帆(徳島大理工学部4年)、大䕃朋紀(鳴門教育大付属小4年)
【奨励賞】佐藤理紗(徳島北高2年)、城東高校Aグループ8班(同2年、3人)、チームHANAの妖精(徳島市立高3年、4人)、チームみりなな(脇町高1、3年、5人)、レボリューション(脇町高1、2年、6人)
27日に最終審査会、オンラインで公開
最終審査会は27日午後1時半から、徳島市のパークウエストンで開かれる。一般の観覧はオンラインのみで行い、当日の模様は動画投稿サイト「ユーチューブ」で中継する。詳しくは創生アワードの公式ホームページ(https://www.topics.or.jp/list/award)に掲載される。2次元コードからもアクセスできる。
◇最終審査会は「起業家万博」と、学生を対象にした「起業家甲子園」(ともに総務省、国立研究開発法人情報通信研究機構主催)の地方大会を兼ねる。優秀者は四国地区代表として全国大会に選抜される。