【右】「命をかけて戦争に反対しなければ」と話す寂聴さん【左】戦争体験を語り、「責任が重いのは選挙民」と訴える美輪さん=写真はいずれも長崎市内(長崎新聞社提供)

 文化と戦争

 美輪さん 明治から大正、昭和初期にかけての文化のロマンは、寂聴さんに移り香として残っている。それが、戦争が始まるとどんどんなくなっていった。あの知性のなさをどう思います? 美人画は全部禁止で、戦争画しか書いちゃ駄目。バイオリンは敵性語だから使ってはいけないと言うから、何て呼べばいいかと問うと「ひょうたん型糸こすり器」と答えるのよ。

 寂聴さん 今、だんだんとあの時代に似てきている。このままいくと「あの作家に書かせるな」とか「こういうことを書け」とかいう世の中になると思う。私は本当に怖い。

 美輪さん 既になりかけているじゃありませんか、沖縄の新聞社二つともつぶした方がいいとか。戦時中と同じ事をやり始めている。

 大正10年に暗殺された(首相の)原敬は、ヨーロッパを回ったから敵を知っている。資源力、財力、軍事力、文明力では日本は勝てっこない。どうすればいいのか。人的資源やもの作りは素晴らしく、北斎や広重の浮世絵が海を渡ってゴーギャンやゴッホらに影響を与える。文化で世界に互していくことが日本の道だと言っていた人を殺した。またそれを繰り返すのか。

 代議士が「徴兵制度は場合によってはあり得る」と言っていたが、自分や家族が行くと思っていない。私は「まず国会議員自ら兵隊となるならいい」と言う。安全が保障されていると思うから、あんなのんきなことが言える。日本が戦争できると思っているのがおかしい。日本は、戦争をできない条件、原発を全国に作ってしまった。

 寂聴さん 原発が三つでも爆発すれば日本なんかなくなる。

 美輪さん 日本はいかにそれを避けるか。外交力よ。これからは経済戦争、情報戦争、知力の戦いの時代になる。でも、意識はまだ第2次大戦の時代のまま。

 寂聴さん 少し前までは「この世の中を変えましょう」という英雄がいたでしょう。今はそういう人が一人も出ない。どうしてでしょうね。

 美輪さん 選択肢が広がりすぎたのね。恋愛しなくても夢中になれる趣味や娯楽がある。私たちの時代は映画しかなかった。あとはラジオとレコード。娯楽がないから恋愛や読書に向かったけど、今は本なんて読まない。選択肢が多岐に広がりすぎちゃった。だからエネルギーが分散するでしょ。

 平和への思い

 寂聴さん 戦争は絶対してはいけません。「いい戦争」「何かのための戦争」というのはない。集団人殺しだからそんなことしちゃいけない。仏教は「殺すなかれ殺させるなかれ」。長崎は広島とともに世界にない原爆の被害に遭っているが二度とあってはならない。

 だんだん戦争しようとしている。今の政治は本当におかしい。そんなことを言ってはいけないような空気があやしい。そんなことを言ってもいい時代が続かないと駄目。どうか皆さんが先頭に立って戦争に反対し、二度と繰り返さないようにしてください。私たちが命をかけて反対しなければならない。私は、この世でしたいことをしてきたけど、まだしたことがないのは牢屋に入ること。最後はそれでも構わないと思っている。こちらの観音様(美輪さん)も戦争反対。

 美輪さん 私は、原爆投下後の悲惨な状況を見たし、出征するカフェのボーイさんを長崎駅まで見送りにも行った。万歳三唱して彼を乗せた列車が出る寸前、彼の母親が人をかき分けて息子の足にしがみつき「どげんことがあっても死ぬなよ、生きて帰ってこいよ」と言った。すると憲兵が母親を突き飛ばし、「なぜお国のために死んでこいと言わないのか」と怒った。

 お母さんは柱に額をぶつけて血を流し、ボーイさんは何とも言えない顔で敬礼していた。戦死した彼がこの世で最後に見た母親は、憲兵に突き飛ばされて血だらけの姿。情けないじゃありませんか。それをまたやろうとしている。

 責任が重いのは選挙民。あなた自身、あなたの家族がひどい目に遭う。彼の母みたいに誰でもなり得る。そうならないように、皆さんよろしくお願いします。