遅咲きの新星が県陸上界の悲願を達成―。三重県伊勢市で行われた全国高校総合体育大会(インターハイ)で、徳島市立高3年の大地彩央里さん(18)が陸上女子400メートル障害を制した4日、恩師や両親は快挙をたたえ、喜びをかみしめた。女子トラック種目では県勢59年ぶりとなる優勝に、県内の陸上関係者らからは祝福や活躍に期待する声が上がった。
炎天下の「三重交通Gスポーツの杜伊勢」で行われた決勝レース。10台目のハードルを飛び越えた大地さんが最後の力を振り絞ってゴールに飛び込み、高校生日本一の栄冠をつかんだ。記念撮影でガッツポーズをつくり、喜びを表す教え子の姿に、同高陸上部の村山佳史監督は「大舞台で見事に結果を残した。さすがとしか言いようがない」と誇らしげに語った。
父秀明さん(49)=徳島市三軒家町、運転代行業=と母洋子さん(48)は、静岡県であった親戚の結婚式に出席していた。「はらはらして、式どころではなかった」と秀明さん。レース後に大地さん本人から「優勝したよ」と電話連絡があり、「よく頑張ったね。おめでとう」とねぎらった。吉報は周囲にもすぐに伝わり、式場は拍手と歓声に包まれた。
彩央里さんは八万南小でソフトボールを始め、一日に3、4試合登板してもばてなかった。走るのも得意で、八万中時代に陸上の道へ。目立った成績は残せなかったが、徳島市立高に進学後は食事管理に気を配るようになり、体力や筋力を付けようと、厳しいトレーニングに明け暮れた。こうした練習の成果が実り、昨年秋にはU18日本選手権で400メートル障害を制し、400メートルの県記録も樹立した。
「高校でぐんと伸び、心も体もたくましくなった」。徳島陸上競技協会の卯木英司会長は、持ち味の体力に加えて、前向きな性格やものおじしないハートの強さを勝因に挙げる。今回、優勝候補の一角として臨んだインターハイ。プレッシャーをはねのけての快挙に卯木会長は「2年後の東京五輪に向けた飛躍が今から楽しみ。この調子で、県陸上界を背負っていってほしい」と期待を込めた。
県内の中学生にとっても、大きな刺激となった。18日開幕の全日本中学校選手権(全中)に短距離2種目で出場する石井中1年の杉村実優さん(13)は「大地さんの県記録が大きな目標。後に続けるよう努力し、全中で活躍したい」と目を輝かせた。