小学生と保護者ら100組以上が参加した「親子テニス教室」=徳島市の大神子病院しあわせの里テニスセンター

小学生と保護者ら100組以上が参加した「親子テニス教室」=徳島市の大神子病院しあわせの里テニスセンター

 徳島商業高校テニス部が長年続けている地域活動で最も大きなイベントが、県下一円から参加者を募る「親子テニス教室」です。夏休みと冬休みに合わせ年2回、専門のコーチを招いて開かれます。今回は徳島市大原町の大神子病院しあわせの里テニスセンターで1月8日に催された親子教室を取材しました。

 教室は午前と午後に計3回あり、小学生とその保護者ら100組以上が参加しました。日本テニス協会のS級エリートコーチ・神谷勝則さん(60)が準備運動や体幹強化、初心者が上手にラリーできる方法などを指導しました。

 冬の教室は通算9回目で部員たちも手慣れた様子。子どもたちに積極的に声を掛けて招き寄せ、一緒に打ち合いました。ラケット同士を軽く触れ合わせてあいさつも交わします。

 テニススクールに通っている北島南小5年の伊澤夢人君(11)は、シンプルな動作でボールを打ち返す神谷コーチらの姿を見て「ラケットの使い方がよく分かった」と満足そう。周囲は知らない人ばかりで最初は不安だったようですが、ペアを組んだ高校生部員らのサポートもあって徐々にコミュニケーションも図れたと言います。

 年間100回以上、各地の講習会などで指導している神谷さんは、徳島商高のような取り組みは非常に珍しいと指摘します。

 「高校生が地元の子どもに直接教えるのは全国的にもまだ少なくて、徳島商高はパイオニアです。これから高校生がこうした役割を果たすのは、どのスポーツでも必要になると思います」

 「テニスは相手がいて成り立つスポーツ。子どもたちとつながりを持ち、ラケットスポーツの魅力を伝えるのは有意義なことです。同じような取り組みは鳥取や千葉、富山でも始まろうとしています」

 「子どもたちにスポーツする機会を届けるのは地域の高校生の役割ではないかと思います。これからますます必要になる。それが部活のあるべき姿じゃないかと考えています」 

 高校生たちはどう感じているのでしょうか。今回の教室に参加した3年生の坂口実夢さん(18)は3年間の地域活動について「小学生との交流で人間的に成長できた部分も多かった」と振り返ります。

 「子ども教室でテニスの面白さが伝わり、その子どもたちが将来、徳島商高のテニス部に入ってくれたらうれしいですね」

 親子教室は今回までに夏冬合わせて14回あり、延べ662小学校の親子1631組が参加しました。テニス部のアンケートでは97%を超す参加者が、近所の高校でも同様の教室を開いてほしいと望んでいるそうです。

 教える側も教わる側も成長し、地域の期待も大きい徳島商高テニス部の取り組み。部活の在り方が議論されている中で、一つの将来像を示しています。

【動画URL】https://youtu.be/y5lMADh5pek