佐那河内村の主要道路である国道438号線沿い。郵便局だった場所が、親子で気軽に通えるカフェに生まれ変わろうとしている。1月下旬のオープンを目指し、鋭意準備中だ。
「佐那河内村はすっごくいいところ。中心市街地にアクセスしやすいし、自然豊かで村民の方はみなさんあったかい」と代表のひらかわひろこさん(42・福岡県出身)は頬を緩める。2011年に夫の仕事の都合で徳島市に引っ越した。2015年には、田舎で子育てしたいと佐那河内村へ移り住んだ。「当時は夫が仕事で忙しく、ワンオペで息子2人の育児と家事をしていたんですが、いろいろ頑張りすぎてたみたいで。そんなとき、主に大神子海岸で開催される『HAHAはクラブ』という親子サークルに行ってみたんです」。ひらかわさんが参加したのは、子どもたちは野外で思いきり遊び、母親たちは育児に関する情報交換や対話を目的とするサークルだった。「そこで初めて自分の辛さを吐き出せたんです。共感してくれるママ友ができて、気持ちがスッキリして。あぁ、参加してよかったなと」。その経験を元に母親同士が交流できる場を開こうと、2年ほど自宅を開放して「森のようちえんお山のおうち」を始めた。自然の中で親子で遊びながら、同じような思いで子育てする仲間が集うようになり、育児が楽しくなった。
2018年に夫とともに地域づくりに取り組む会社「暮らしと自治と創造」を設立。佐那河内村からの委託事業で、地元に住む人を取材して記事をまとめた村のウェブサイト「村の人々」と「村の日々」を担当したり、「ひらめ珈琲」として月1回のペースでイベントに出店したりと活動の幅を広げた。その間も育児の真っ最中だったひらかわさん。「私と同じように、子育てに悩み奮闘する人をお手伝いする場所を作りたい」と、2021年頃から準備を始めた。「お母さんだけじゃなくて、地元のおじいちゃんおばあちゃん、村外の若い子などさまざまな人が気兼ねなく通えるようにしたかったので、カフェを主体にしようと決めました」。
舞台となるのは築60年ほどの旧郵便局。昨年10月にフルリノベーションに取りかかり、柱をなくしたり天井や床材を剥がして張り替えたり。壁は、ひらかわさんや友人とその子どもたちが交代で1カ月かけて珪藻土の塗料を塗った。
店内入って右手にはオープンキッチンが広がる。カフェのメインメニューとなるのはコッペパン。その場で好きな具材をチョイスしてサンドするスタイルで、選ぶワクワク感がある。「子どもに食べさせやすく、親も一緒に食べやすいものってなんだろう…。コッペパンだ!って思いつきました。具材には村で採れた野菜やフルーツを使う予定です」。さらに、ミルクやおむつ、無添加の冷凍食品やレトルト食品を販売するスペースも設ける。「お昼にコッペパンを食べて、コーヒーを飲んで休憩して、夕飯も買って帰れるように。ここに来たら、1日楽ちんコースになるようにしたい」と力を込める。
POST GARDENは、ひらかわさんと子育て仲間のアイデアが形になっている。「私がカフェをするって話したら、いろんな人が気にかけて手伝ってくれたんです。前に内装の仕事をしていた友人にアドバイスしてもらって店内の配色を決めましたし、食に詳しい知人にメニューの相談をしました。それぞれ得意なことを活かして、一つのチームとしてここまで作り上げてきました。カフェは、私と子育て仲間がスタッフとなって運営するんですよ」としみじみと語る。開店まであと少し。店内にキッズスペースを作り、家具や什器、絵本を揃えるなど最終の段階に入っている。「もっと楽に子育てしていいんだよって思うんです。今日ごはん作るのしんどいなぁとか、誰かと話したいときにPOST GARDENを活用してくれたら嬉しいです。そして、人と人とが集う場所になれたらいいなと願っています」。
POST GARDEN(ポスト ガーデン)
徳島県佐那河内村下高樋41-6
営業時間や定休日は未定
駐車場:あり
多機能トイレ:あり
Wi-Fi:あり
完全個室:なし
座敷席:なし
開店:2023年1月下旬オープン予定