西日本豪雨は、6日で被害発生から1カ月。大規模な土砂崩れなどで徳島県内で最も深刻な被害が出た三好市では、今なお猛威の傷痕が残る。道路の復旧工事が進みつつある一方で、山間部の2集落の住民は長期避難を強いられ、一部世帯は孤立状態となっている。地滑りによる新たな土砂災害が発生する恐れもあり、雨への警戒が続く。

 市危機管理課によると、市内で人的被害はなかったものの、山城町で住宅2棟が全壊し、池田町で1棟が一部損壊。道路の崩落が相次ぎ、7月10日時点で81世帯262人が孤立した。現在、孤立状態になっているのは山城町の光兼集落3世帯5人で、早ければ8月6日に解消する。

 市が災害の特例として被災者に用意した市営住宅と市有施設には計14世帯が移った。親族宅などに身を寄せた住民も少なくない。特に土砂崩れの被害が大きかった山城町の粟山、仏子両集落は、計25世帯46人全員が離れた。

 市道や林道などの迂回(うかい)路はほぼ確保され、仮復旧が進む。粟山集落から市営住宅に移った7世帯は、今月に入って一時帰宅が可能になった。

 粟山自治会の喜多二三男会長(66)は「家や畑を見に帰れるのは本当にありがたい。ようやく希望が出てきた」。近く孤立状態が解消する光兼集落で妻と2人暮らしの山﨑昭さん(71)は「あと少しの辛抱。早く車で通れるようにしてほしかった」と市道の仮復旧を待ちわびる。

 住民が強く望むのは市中心部と結ぶ県道の通行再開。県西部県民局によると、三好市では山城町2路線、井川町1路線、東祖谷1路線(国道)で道路の一部が崩落したままとなっている。

 山城町の平上集落では、集落を出る際に林道を車で30分以上迂回しなければならない。自宅までタクシーを呼べず、運転できない高齢者らは不便を強いられている。

 農家民宿を経営する森久保利一さん(69)は「民宿はずっと休業状態。いつになったら県道を通れるようになるのだろうか」とため息をつく。

 今後の課題は地滑り対策だ。わずかな降水量でも崩落する危険性があるとして、県は山城、池田両町と西祖谷山村の計10カ所に斜面の動きを感知する伸縮計を設置した。市は降水量と伸縮計のデータに基づき、早期避難を呼び掛けていく。

 市危機管理課の近藤英美課長は「台風シーズンが終わるまで気が抜けない。誰も犠牲にならないよう最善を尽くす」と話した。