冬は空気が乾燥し、星がとてもきれいな季節です。
剣山頂上ヒュッテの本棚には、宇宙飛行士を描いた漫画「宇宙兄弟」を置いています。作品に触れると、山小屋が小さな宇宙船のように感じることがあります。人里離れたとても狭い場所にたくさんの人が生活しているということが理由です。そして、それだけではありません。
ヒュッテのスタッフは、麓の街やそこでの生活のことなどを「下界」と呼びます。休暇明けの同僚に「久々の下界はどうでしたか?」と聞いてみたり、テレビを見ながら「下界ではあんな食べ物が流行ってるんだね」と呟いてみたり。
下界にはさまざまなモノやサービスがあふれていますが、山小屋の近くにはお店が一つもありません。街までは少なくとも、徒歩と車で片道2時間程度はかかります。スーパーマーケットのような食品や家庭用品を扱う店だけではなく、電気屋さん、水道屋さんといった生活のインフラを維持してくれるサービスもないのです。
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